『タイムスリップ』
藤原 格
大病院のエリート勤務医が江戸時代にタイムスリップしたらしい。
贅沢だと思った。
酒が呑め、生の坂本竜馬にあえて、綾瀬はるか似の美人に慕われ、立派なお屋敷に居候までさせてもらえたではないか。
その上、なにかしでかすと歴史が変わってしまうだの、刺激的なうらやましいことをほざく。
俺は地方の小さな町の、小さな病院に勤める勤務医だ。
収入は同じ世代のサラリーマン以下だし、彼女もいない。
あるとき患者がトラブルを起こした。
もみ合っているうちに階段から転がり落ちてしまった。
そのとき、時空を超えてしまった。
平成の社会に戻ることも、医者でいることも、その瞬間にあきらめた。
俺が迷い込んだのは弥生時代だった。
俺がなにをしても歴史はこれっぽっちも変わるはずもなく、
たて穴式住居の中で地味に一生を終えた。
(了)
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